光の村養護学校の教育

  () 基本方針

   1) 昭和40年代までの教育

     昭和30年に中学特殊学級の担任になって木工指導を続けるうちに、「この子らは技能の訓練から技術の

教育へと進めることができるのではないか」と考えるようになった。昭和34年度には、高校年齢の職業指

導施設(紙器工場)を作ったので、そこで技術教育の実験を続けることにした。3年、5年と続けるうちに成果

が見えてきたので職業指導施設を光の村養護学校に発展させ、昭和44年度から技術教育をコアとする総

合教育を始めた。

 

   2) 昭和50年代以降の教育

     昭和30年代後半から始まった日本経済の高度成長による豊かな時代は、50年代に入って「子供たちの重

度化、問題の多様化」という崩壊現象を生んだ。有史以来の繁栄は、障害を持つ子供を必要以上に過保護

で包む風潮をうみ、子供もまた依存心を肥大させて悪循環を引き起こしたためである。このために昭和50

年代・60年代の教育は「心身と生活の異変をどう改めるか」が最大の課題となる。このためには従来の教

育原理に医学的な領域を加えなくては解決できない。試行錯誤を重ね、平成の新時代に入る頃になって次

のような新しい教育課程を決めた。

 

  () 教育課程の内容

   1) 暮らしの質を変える「生活指導」

     子供の心身のおかしさは、そのほとんどが過保護によって作られたもので、いわば栄養過剰による根腐病

的現象である。だから学校を、まず子供たちが助け合って自立する生活共同体にして「依存する根っこ」を

「自立する根っこ」に育てなおす。光の村養護学校が全寮制であるのはそのためである。土を作り、作物を

育てる篤農家のように、丹念に育てなおせば、子供たちは必ず自立の方向へと歩む。すべての教育はここ

から始まる。

 

   2) 体の質を変える「体育」

      身長、体重という形態面の発達は標準並みでも、胸囲となると標準以下の者が多い。(体脂肪を差し引いた

数値)。肺活量も標準値にとどく者が少なく、心肺機能の発達の遅れが目立っている。これは過保護のため

幼い時から力いっぱい息をはずませるような活動が少なく、何事もあなた任せの依存生活が作った体質で

ある。だから持久力は極めて弱く、少しの負荷でバテる者が多い。その上に柔軟性が低い。表面的には柔ら

かそうに見えても、関節のすべてが錆びついたように固く、動きが鈍く、不器用である。瞬発力も低く、跳躍

力などはほとんど育っていない。だから感覚機能も育っていない。この鈍重で不器用でひ弱な依存体質を、

機敏で器用でたくましい自立体質に作り変えて、健康で能力いっぱいに働いて長生きをする人間に育てる。

 

   3) 手の質を変える「作業教育」

     子供たちに手は何に使うかと聞くと、「もらう、食べる、遊ぶ」と答える。依存生活は消費するだけであるから

強さも器用さも育てない。この子供たちの手は発達が大きく遅れている。知的障害児は、労働によって強く、

賢く、豊かな人間に仕上がる。枯れ枝のような手を、たくましく器用な手に変える訓練を徹底し、仕事に習熟し

上達することで、大脳を活性化し、表情を引き締め、考えて働く人間に育てる。

 

   4) ことばと生活の質を変える「教科教育」

     「暮らしと体と手の質」が変わり、消費するだけの人間から力強く生産する人間に変われば当然子供は全人的

に賢く生まれ変わる。植物も根の働きが活発であれば、葉の同化作用も活発で良い花を咲かせるように、人間

も全身で活発に活動すれば頭の働きも活発になる。こうなると、読む学習も、書く学習も、話す学習も、計算する

学習も向上し、言語の構造が変わる。つまり、依存する言語構造から自立する言語構造へと転換するのである。

 

 ()  学習の内容  

     1) 教科教育

       各教科を総合単元、あるいは単独のドリル学習等によって学習内容を構成する。

 

  領 域

 ねらい                    

 

  言 語

 

  「良く聞きわけること、はっきりと話すこと、読むこと、書くこと」等、日本語を使い分ける能力は、依存する生活の中では十分育たない。学校のあらゆる場面で、あらゆる時間を特設して指導を徹底する。

  数 量

  実際の活動の中で具体的に指導する。目測能力も向上させる。

 

 

  生 活

 

 

  あたりまえの暮らし方を徹底して指導し、何事も人に頼らず自力でやり遂げようとする態度と、それを支える技能を確かに身につける。仲間に合わせること、仲間を思いやること、常に相手の立場にたって物事が考えられること、ルールを理解して守ること等、社会人の基礎をしっかりと育てる。「なぜ」「どうして」「そうするとどうなる」という考える習慣も確かに育てたい。

  体 育

  力強く、しなやかで、敏捷性があって、持久力の高い体作りを徹底し、良い暮らし、良い仕事の基礎を確かに育てる。

 

  情 操

 

 

 

  特に音楽を中心に日本語を正しく発音して、美しく歌う指導をする。ハーモニカその他の楽器に親しみ、美しい音を出すこと、仲間とともに演奏することの指導をする。和太鼓では、正確なリズム、力強く曲想豊かな表現の指導を徹底して我が校の校技といえるものに仕上げる。校外での演奏活動を積極的に行い、文化面からの社会参加する機会を多く持つ。

 

 

2) 技術教育

 

   本校では、技術教育を全人教育の中核に置き、次のような実習場をもっている。

 

 

 

作業実習

 

 

  面 積

 

 

   設備と教育          

 

 

  紙器実習 

 

 

 

 

  844.93u

  193.20u

 

 

 

紙器加工および印刷に関する基礎的な技能・技術の教育を行う。

 

 

 

  製菓・製パン

  実習   

 

 

  107.20u

 

 

 

製菓・製パンに関する基礎的な技能・技術の教育を行う。

 

 

  木工実習 

 

 

 

  247.5 u

 

 

 

木工工芸に関する基礎的な技能・技術の教育を行う。

 

 

  自転車実習室

 

 

 

64.8u

 

 

 

自転車の構造を知り、修理についての基礎的な技能・技術の教育を行う。

 

 

  自動車板金

塗装実習

 

 

115.5u

 

 

 

自動車の板金・塗装技術、修理技術に関する基礎的な教育を行う。

 

 

  農業実習 

 

 

 

 

2.12 ha

 

 

 

 

牧場、農場、果樹園等の栽培、飼育管理、乳製品加工に関する基礎的な技能・技術の教育を行う。

 



3.生徒の状況

 全国の養護学校卒業生の平均就職率は、昭和50年代以降、平均30%程度で低迷している。(光の村の場合は50〜60%)

平成の時代になっても向上せず、かえって低落の傾向がある。光の村ではこの状態を生徒の重度化に教育が追いつけなかっ

た結果と考えているので、入学希望者の親で、光の村教育に強く共感し、同志的な立場に立つ者については、地域を問わず

入学を許可している。従って障害の程度も問わない。要は家庭と親が、いかに学校と教師に近づき一体となり得るかという

ことが選考の第一基準となっている。



(1)学級編成及び在籍生徒数  平成17年度

  学部

性別

中学部

高等部

専攻科

合計

1

2

3

小計

1A

1B

2A  

2B

3

小計

1

専2

小計

13

30

51

 

 

 

 

10

15

35

11

61

 

 

 




 (2)知的障害の程度

     学部

程度

中学部

高等部

専攻科

合計

最重度

    1

    1

    

    2

重 度

    7

   20

    2

   29

中 度

    4

    4

    4

   12

軽 度

    3

   10

    5

   18

   15

   35

   11

   61


(3)併せ持つ障害・疾病

学部

障害・疾病

中学部

高等部

専攻科

合計

自閉症・自閉的傾向

   8

  15

    2

  25

情緒障害

   1

   1 

    1

   3

てんかん

   1

   4

    2

   7

ダウン氏症候群

   1

   2

    3

   6

心臓疾患

   1

   1

   

   2

アトピー性皮膚炎

   2

   2

    1

   5

慢性腎炎

   

   

    1

   1

口蓋裂の手術

   1

   1

    

   2


(4)出身地別生徒数

〈県内〉                

郡市名     

中学部

高等部

専攻科

合計

南国市

 4

 

 1

 5

安芸郡

 

 1

 

 1

吾川郡

 

 1

 

 1

幡多郡

 

 1

 

 1

合計

 4

 3

 1

 8

 

〈県外〉

都道府県

中学部

高等部

専攻科

合 計

香川県

  1

  1

  3

徳島県

   

10

  3

 13

愛媛県

  

  1

  2

  3

兵庫県

  6

  11

  

 17

大阪府

  

  2

  1

 3

奈良県

  

  2

 

  2

京都府

  1

   

  

  1

愛知県

 

  1

 

  1

静岡県

 

 

石川県

 

  1

1 

  2

千葉県

 

 

神奈川県

  

  1

 

  1

埼玉県

  1

  

 

  1

三重県

 

 

福岡県

  

  1

1 

  2

熊本県

  1

 

 

  1

合 計

11

32

10

53

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